税理士法人とどろき会計事務所
山本 英司

 昨年の12月、大原簿記学校が主催する就職面談会に会計事務所としてブースを出しましたので参加して来ました。私たちの業界では毎年8月と12月、主に採用活動が行われます。8月は税理士試験が終わった後、12月は合格発表が終わった後になります。 税理士試験の受験者数は毎年減ってきていて、過去6年間で受験者数が1万人以上も減少しています。就職面談会でも就職希望者よりも参加する会計事務所の職員数の方が多いというのが現実です。受験者数の減少には、絶対数の減少も関係していると思われます。
どの業界でも人手不足が深刻化しているとよく聞きます。人手不足は、既存スタッフの負担増やサービス品質の低下など、さまざまな問題の原因となりかねないです。特に中小企業では、仕事の本質的な部分が属人化する傾向になると日頃から感じています。
「業務が属人化」すると、◆ 自分の能力を鼓舞し、自らの価値を維持するためにノウハウを他人に見せない◆ 自分だけの「管理ルール」をつくり、他人にはその仕事ができないようにする◆ 「その人しか知らない仕事」は業務停滞、不祥事発生など組織のリスクが高くなる◆ 組織に仕事を通じて得られた知見が蓄積されないなど、長期的に組織運営を捉えるとまるでメリットがありません。

人材獲得が困難になれば、中途採用を増やすか地道に自社の従業員の能力を高めていくほかありません。また、現在の人材を辞めさせない努力も必要です。 辞めずにずっとこの会社にいたいと思ってもらうには、「安心して働ける環境づくり」や「やりがいを感じさせる仕組みづくり」が必要です。 JALの再生を果たした稲盛和夫氏のように、すぐれた経営者は、よき教育者でもあります。経営者やリーダーには、従業員や部下の評価をするという側面もありますが、それだけで終わらず、「教育者」としての姿勢、ときには育つのを待つという忍耐、「従業員や部下の成長を自分のことのように喜ぶことができる」、そうした組織作りも求められていると思います。

いずれにしても今後人材の獲得競争は厳しい状況が続きますので、人材獲得について企業も攻めと守りの両方の戦略を立てていくことが必要となるでしょう。