税理士法人とどろき会計事務所

上原 猛

 

 2021年7月23日に本来の予定より1年遅れで開幕した東京オリンピックは8月8日の閉会式をもって終了しました。1964年以来の東京オリンピックでは、開催国となった日本選手団が史上最多58個のメダルを獲得しました。開催期間中は連日多くのメディアでオリンピックの結果が取り上げられ、熱中していた方も多いと思います。

 多くのオリンピックメダリストを輩出した東京オリンピックですが、今回はメダリストの報奨金と、それに伴う所得税について説明します。

 

 通常、賞金や報奨金を獲得した場合には所得税法では一時所得に分類され、次の算式により所得金額が算出されます。

         ( 一時所得の金額 − 経費 − 50万円 ) × 1/2

 したがって、クイズ番組の賞金や懸賞等の賞金品については経費を差し引いたうえで50万円を超える部分については課税されることとなります。

 一方、オリンピックメダリストが獲得する報奨金は大きく下記の通りで、それぞれ所得税の取り扱いが異なります。

 

1.日本オリンピック委員会(以下JOC)及びJOC加盟団体から支払われる報奨金

 JOC及びJOC加盟団体からの報奨金については所得税法第9条1項14号の規定により「オリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会その他これらの法人に加盟している団体であって政令で定めるものから交付される金品で財務大臣が指定するもの」については所得税を課さないこととされています。

 しかし、この非課税規定には非課税とされる限度額が獲得したメダルごとに設けられており、それぞれ金メダルは500万円、銀メダルは200万円、銅メダルは100万円が非課税限度額となっています。では、それぞれの報奨金の金額はどのくらいなのでしょうか。

 (1)JOCから支払われる報奨金

  JOCから支払われる報奨金は、非課税限度額と同額で金メダルは500万円、銀メダルは200万円、銅メダルは100万円となっています。

 したがって、JOCから支払われる報奨金については所得税が全額非課税となります。

 (2)JOC加盟団体から支払われる報奨金

  一方、JOC加盟団体から支払われる報奨金については競技によって金額が異なります。例えば今回の東京オリンピックでは、陸上競技やゴルフでは金メダルの場合2,000万円の報奨金が支払われるため非課税限度額である500万円を超える部分は課税の対象となります。しかしながら柔道では報奨金そのものが無いなど、競技によって大きな違いがあります。

 

2.その他の報奨金

 上記以外の報奨金としてはスポンサーや所属企業からの報奨金が挙げられます。これらの報奨金については非課税の考え方がないため全額が課税対象となりますが、所得の種類が異なり、スポンサーからの報奨金は一時所得として、所属企業からの報奨金は給与所得として課税対象となります。とりわけ所属企業からの報奨金については通常の賞与が支給された場合と変わらない課税関係となりますので、その税負担額は大きなものになり得ます。企業側としては一時金として支払うのではなく数年掛かりで定期金として支払う、又は退職時に退職金として支払うなどの工夫により、所属選手の納付税額を減少させることも検討の余地があるかと思います。