2025 年度最低賃金の引き上げと中小企業が取るべき対策

税理士法人 とどろき会計事務所
堂領 広美

2025 年度の地域別最低賃金が公表され、全国加重平均は時給 1,121 円と過去最大の引き上げ幅と
なりました。
東京都は 1,163 円、神奈川県は 1,162 円と、主要都市部では 1,100 円台が定着しています。
政府は「全国平均 1,500 円」を将来的な目標としており、今後も毎年のように大幅な改定が見込ま
れます。

【1. 人件費増加が与える影響】
最低賃金の上昇は、人件費の増加として企業経営に直接影響します。
特に、パート・アルバイト比率が高い業種(小売・飲食・介護など)では、人件費総額が数%単位
で増えるケースも珍しくありません。
また、最低賃金付近で働く従業員の時給だけでなく、既存社員との賃金バランスを取るためのベー
スアップも必要になる場合があります。

【2. 実務上のチェックポイント】
・賃金台帳とシフトの再確認
最低賃金を下回る時給設定がないか、深夜割増や残業割増を含めた計算が適正かを確認しましょ
う。
・同一労働同一賃金との整合性
パートと正社員の待遇差が不合理とならないよう、手当や賞与も見直すタイミングです。
・就業規則・賃金規程の更新
時給変更を伴う場合は、規程や雇用契約書の改定も忘れずに行いましょう。

【3. コスト増への対応策】
最低賃金上昇は避けられないため、価格転嫁や生産性向上が中長期的な対策になります。
・業務フローの見直し、デジタル化・省力化投資
・補助金の活用(業務改善助成金は最低賃金引き上げ時に利用しやすい制度です)
・採用・教育コストを抑えるための定着率改善

 最低賃金の引き上げは「コスト増」という側面だけでなく、従業員満足度や採用力向上のチャン
スでもあります。
今後も上昇傾向が続くことを前提に、早めの賃金設計と資金繰り対策が重要です。
税理士としては、キャッシュフロー計画や助成金活用のシミュレーションを通じて、経営者の意思
決定をサポートしていきたいと思います。

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